アダンの実(恩納村で撮影)
【方言名】アダニ[奄]、アダンムギー[宮]、アザニ[八]
トカラ列島の口之島より南に分布するタコノキ科の常緑小高木。海岸に自生し、パイナップルのようなオレンジ色の実をつける木です。枝から太い気根をタコの足のようにのばし、海辺に密生して海岸林を形成しています。雌雄異株で、雄株は白い房のような雄花が咲き、雌株は丸い雌花が咲きます。長さが1m以上になる細長い葉は、縁にギザギザのとげを持っています。
アダンの葉は昔から様々な生活用品の材料になったようで「アダン民具」と呼ばれています。アダン葉の筵(むしろ)や草履がかつては県内全域で使われていたそうです。
また、1904年頃にアダンの葉で編んだパナマ帽の製造が始まり、1911年には「アダン葉帽子」は砂糖・泡盛生産に次ぐ売上を記録するほどさかんに生産されました。しかしその後、原料のアダンが乱獲によって安定供給できなくなり、それに代わる紙製のパナマ帽が主流になっていったそうです。
現在、アダンは防風・防潮・防砂の役割を持つ海岸林として県内で広く利用されており、沖縄のビーチの景観には欠かせない名傍役でもあります。
小笠原諸島の自生種オガサワラタコノキとは近種でよく似ています。